25号変形
娘、1歳半
Kenwanは、左利きである。
絵をご覧いただけると、分かると思うが、
デッサンの斜線は、左上から右下へ描かれている。
ウィーンへ来た初めの頃は、美術史美術館へよく通ったものだが、
17世紀のオランダの静物画を気に入って、
何度も何度も観に行った。
画集も手に入れて、飽かずに眺めていた。
その頃から、レモンの皮を剥いて描くようになった。
それらの絵のレモンは、左手で剥いたものと、右手で剥いたものがある。
Kenwanが、自分で剥いたのと私が剥いたものとの違いである。
私が、剥いたのは、最初の頃、ほんの僅かな間だったと思う。
レモンの皮を剥くと、中の実との間に産毛のようなフワフワっとした白い部分があるが、空気に触れ出すと、見る見るうちに乾いて様子が変わってしまう。
だから、剥きレモンを描くときは、Kewanは非常にピリピリしている。
下描きをせずに、ぶっつけで絵の具を乗せていくのだ。
2時間くらいで描いてしまう。
今までにたった一度だけれど、描いている最中にこのレモンの皮が落ちてしまった事があった。
その日は、運悪く休日でお店は全て閉まっているし、
Kenwanは、取り乱して右往左往するし……
この事故(笑)に私は無関係であったが、
非常に神経に来るようで、とにかく自分でやった方が気に入るようで、
私はお役御免になったのだ。
ところで、実は、私も左利きだったらしく、今でも絵は左手でも描けるし、
歯ブラシは、左手だし、ちょこちょこっと残っている。
なのに娘が、全くの右利きなのが意外であった。
マダムKenwan
M15号 題名「それぞれの場所」