ここ数年、私は画材をおおむね、
ベスナー( Bösner)で購入している。
Bösnerはドイツ、オーストリア、フランスなどに跨がりチェーン展開をしている画材量販店である。
ウィーン支店は地下鉄U3の終点シンメリングにあり、少々遠いのが難点だが、広い店内には、たいていの物は揃っている。
いつも買うのは消耗品の筆や油絵具、それに自作キャンバスを張る為の木枠などで、日頃は張りキャン(あらかじめ木枠に張り付けて売っているキャンバスの事)などには見向きもしないのだが、この前行った時、とても小さな張りキャンと木枠があるのを見つけ、思い立ってそれらを買ってきた。
13cmx9cmの木枠三つと15cmx10cmの張りキャン三枚である。
小説などの文学の世界では、短編よりも更に短い掌編という呼び方があるが、まさに手のひらサイズのキャンバスだ。
今まで一度も描いた事のないこれらの小さなサイズのキャンバスに、私はにわかに興味を感じ、身の回りにある美しい小さなものを描いてみようと思ったのである。
で、最初に描いたのがこれだ。
「スワロフスキー」13cmx9cm
やってみるとこれが結構面白い。
日中は自然光の元で大きな作品を描き、日が沈んだ頃、ベスナーで同時に購入した、自然光と同じ波長の光を出す人工灯の元、この小さな絵を描き始める。
下書きも何もなしで、いきなり油彩で描き始めるが、この時の最初の緊張感が何とも心地良い。
上の絵の時は、凡そ二時間足らずで仕上がった。
音楽で喩えて言えば一種のインプロビゼーション、一枚の絵は一つの即興曲のようなものだ。
興が乗り、翌日も描いた。
「いちご」 15cmx10cm
半分に切ったいちごの表面のみずみずしい感じが時間と共にどんどん失われていくのが描いていると分かる。
このブログの名前は「ウィーンの静物画家」なのに、ここのところ絵の話がちょっと少なすぎた。
一月の終わりから描き始めたこの小さな油絵が結構溜まっているので、大きな作品の画像とともにこれらの作品の画像も、短い解説付きでボチボチ掲載しようと思う。
Kenwan